防寒、防風、防虫など農業用ビニールハウスの労働環境

イチゴのビニールハウス
幼児でも収穫できそうなイチゴのハウス栽培
仕事農業

これはイチゴ栽培の風景画像ですが、私がアルバイトをしていた農家では、ミニトマトと大玉トマトの2種類をビニールハウスで作っていました。
大玉トマトの主な担当は代表者。
ミニトマトの主な担当は、代表者の奥さんと伯母、私の3名です。

イチゴ狩りの経験はなくても、1度はビニールハウスを間近でご覧になったことがあるのではないでしょうか。

農業用ビニールハウスを一言でいうなら、屋根・壁付きの畑です。気温を一定に保ったり、野菜を台風から守ったりするなど露地栽培にはないメリットがいくつかあります。

屋根型ビニールハウス、アーチ型ビニールハウス、プラスチックハウス、ガラスハウス、鉄骨ハウス、パイプハウスなど、一言に農業用のハウスといってもいろんな呼び方があるようですが、ここでは一般的なビニールハウスで統一します。

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ビニールハウスはみんなが思っているよりも雨風に強い

台風に強いガラスハウス
プラスチックハウスよりもガラスハウスのほうが雨風に強い

ビニール”というと、柔らかくて軽くて弱い風でもすぐ吹き飛んでしまうようなイメージがありますが、風速40m/sを超えるような強烈な台風でもない限り、まずビニールハウスが壊れることはありません。
アルバイト期間中3、4回くらい台風で休みなりましたが、その台風が通り過ぎた明くる日、出勤するといつも通りのビニールハウスの風景を見ることができました。
もちろん、この結果は事前に台風対策をしっかりと施していた代表者の努力の賜物でもありますが。

露地栽培が屋外作業なら、ハウス栽培は屋内作業です。
ビニールハウスの中での作業では、たとえ大雨の日でも雨合羽がいりません。軍手などの手袋が雨でずぶ濡れになることもなく、晴天の日とほとんど変わらない作業効率で仕事ができます。
風については、どれだけ強くても目に土埃等が入らないのがありがたいです。移動の際、向かい風に苦しめられることもなくスムーズに動けます。

正確には、“窓や入口の戸を閉め切っているとき”、雨風に強いです。太陽の光がまったく差し込まない植物工場と違い、完全密閉型の作業場ではありません。
四方の壁だけでなく天井にも窓が設けられているぶん、普通の一戸建てやマンション、ビルよりも風通しはいいほうです。
夏の天気のいい日には、必ずと言っていいほど窓を全開にします。
このビニールハウスに取り付けられている窓ですが、一部、電動式です。サーモスタットでも付いているのか、ハウス内の気温によって窓の開き具合が変化します。

ビニールハウスの中に暖房が完備されている

農業でも使える暖房器具
真冬のハウス栽培に欠かせない暖房

ビニールハウスの“ビニール”は無色透明なので、屋内でも植物の成長に欠かせない太陽の光がよく入ります。
その関係で、夏場のハウス内は40度近くまで気温が上昇することがあります。人間の場合、こういうときは帽子を被ったり、日陰に移動したりして体調を崩さないようにするわけですが、植物はそうもいきません。
そこで、あまりに日差しが強いときはハウス全体を覆いつくす遮光カーテンで太陽の光を弱くします。

一方、冬ですが、イチゴ狩りを体験した人ならわかるように、曇りや雨の日でもビニールハウスの中はそれほど寒くありません。
窓を完全に閉めているからというのももちろんありますが、一番の理由は暖房を使っているからです。
植物は気温が10度を下回ると、成長が緩やかになったり止まったり枯れたりする確率が高くなります。
あくまで野菜を守るための暖房で、コンビニやスーパーと違いアルバイトやお客のための暖房ではありません。

ビニールハウスの水耕栽培では服が汚れない

水耕栽培と土耕栽培
ミニトマトは水耕栽培、大玉トマトは土耕栽培にむいている

土を使わずに、水と液体肥料で植物を育てるのが水耕栽培です。
私のアルバイト先では、ミニトマトを水耕栽培、大玉トマトを土耕栽培で育てていました。

今更ですが、
「なんで大きいほうのトマトは水耕栽培でやらないのでしょうか?」
と聞いておけばよかったです。
サイズが違うだけで同じ種類だし、やる気になればできたと思うのですが。
考えられるとしたら、“大玉トマトよりもミニトマトを買う人のほうが多くなってきたから”といったところでしょうか。

ミニトマト用のハウスと大玉トマト用のハウスは、造りがそれぞれ異なります。
ミニトマト用は鉄骨タイプで5m以上の高さがありビニールというよりプラスチックもしくはガラスで建物全体が覆われているようでした。大玉トマト用はパイプにビニールシートを張っただけの簡素な造りで比較的どこの農地でもよく見かけるものです。

あまりお金のかかっていない大玉トマト用のハウスは、土足のまま中に入れます。
かたや、お金がたくさんかかっているミニトマト用のハウスは、中に入るとき室内用の靴に履き替える必要があります。
ミニトマト用ハウスの地面には、土を隠すように黒っぽい色のシートが敷き詰められていました
このシートには、雑草の繁殖の抑制、土のぬかるみの防止などいくつかの役割があります。
また、キャンプ等で使うレジャーシートみたいにゴロンと気軽に寝転がることが可能です。

ハウス栽培は露地栽培と植物工場の中間

防虫対策を施した農業施設
野菜の天敵である防虫対策は農業するうえで必須

農業で最も厄介なのが虫です。
人間にとって美味しい食べ物は虫にとっても美味しい食べ物ということで、ビニールハウスの窓には防虫ネットが張ってあります。
ただそれも完ぺきとはいえず、例えば人が扉を開けてビニールハウスの中に入るとき、一緒に虫も入ってくる可能性があります。
その虫から作物を守るため、ハウス全体に消毒を一定の間隔で行っていました。

こういうとき、“もし入り口にエアシャワーがあったら”と、ふと考えてしまいます。

植物工場でも使われるエアシャワー
ドライヤーや扇風機のような役割を持つエアシャワー

エアシャワーとは、埃や虫、細菌などをエアーで吹き飛ばして人の体や搬入物を清潔にする装置のことです。私は半導体工場のクリーンルームに入るとき何度も使ったことがあります。
それなりに効果はあるでしょう。
植物工場は、部屋全体をクリーンルームにしているという話を聞きます。
防虫効果を高めるエアシャワーをビニールハウスで使えないのは、おそらくコストが原因なのでしょう。

それでも、ハウス栽培は露地栽培に比べればはまだいいほうです。
アルバイト中、“蚊”に悩まされた記憶がまったくといっていいほどありません。

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