科学の知識は大事だという話

勉強

皆様こんにちは。
大学で化学を学んでおります、キャベンディッシュと申します。

ハンドルネームは18世紀生まれの科学者、ヘンリー・キャベンディッシュ(Henry Cavendish)からとっています。

今回お届けしますのは、タイトルの通り科学の知識は大事だという話です。
日常でのことだけでなく、どちらかというと情報リテラシーに近いお話もいたしますので、どうか最後までお付き合いください。

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「まぜるな危険」はなぜ危険なのか?

ということで、最初のテーマは「まぜるな危険」。
家庭用漂白剤では、必ずと言っていいほど記されている文言です。
塩素系漂白剤と酸性のもの(サンポールなど)を混ぜてはいけないという注意書きですが、皆様はこれがなぜ危険なのかご存じでしょうか。

正解は「混ぜると塩素ガスが発生するから」。
塩素ガスは人体に有害な物質ですが、それをご説明する前に、なぜ塩素が発生するのかというお話をいたします。

混ぜると塩素が発生する理由は、漂白剤に含まれる物質にあります。
塩素系漂白剤の主成分は「次亜塩素酸ナトリウム」。
これに対して、トイレ用洗剤などには「塩酸」という酸性の物質が入っています。
この2つが混ざることで反応し、塩素が発生するのです。

酸性の物質はほかにもあります(食用酢に含まれる酢酸やレモンの汁に含まれるクエン酸など)が、塩素は家庭にある酸性の物質の中ではとりわけ酸性が強く、そのために混ぜたときに塩素が発生しやすくなっています。

その塩素ですが、先述の通り人体には有害な物質です。
塩素ガスを吸ってしまうと、呼吸器(気道や肺)を傷つけてしまいます
濃度(この場合は一定量の空気に含まれる塩素の割合です)が高くなると呼吸困難に陥り、最悪の場合死亡することもあります。
屋外で塩素が発生した場合は塩素が拡散するため濃度は低くなりやすいのですが、浴室の中など狭い場所で発生した場合は拡散が起こらずに高濃度になってしまい、大変危険です。

命に関わることですので、科学の知識は重要だということがわかっていただけたかと思います。
しかし、今回はもう1つのテーマでも科学知識の重要性を説明いたします。
次のテーマは「情報に振り回されないために」必要なことです。

DHMOとは?

1983年のことでした。
アメリカ・ミシガン州の週刊紙「デュランド・エクスプレス」(Durand Express)は、都市の水道内に「DHMO」(dihydrogen monoxide、一酸化二水素)という物質が入っていると報じました。
気化したガスを吸い込むと水ぶくれができてしまうというのです。
その後も、カリフォルニア大学の学生が危険性を主張する動きを見せました。
1994年には「The Coalition to BAN DHMO」(DHMOを禁止する会)なる組織が立ち上げられ、さらにはDHMOの危険性を訴えるサイトまでできています。
なんでも酸性雨の主成分で重篤なやけどの原因となり、それでいて食品に添加されていることもあるのだとか。

ここまでの説明で、DHMOは得体のわからない危険なものとお考えになった方も多いかと思います。

…種明かしをしましょう。
この物質は2つの水素原子が1つの酸素原子に酸化されて(酸素と結合して)できています。
化学式は「H2O」。
もうおわかりの方もいらっしゃるかもしれませんが、何のことはありません。
ただの水なのです。

気化したガス(100℃以上)を吸い込むとやけどして水ぶくれができるのは当たり前ですし、酸性雨も雨ですから水は当然含まれています。熱湯が手にかかればやけどをすることもありますし、水分が含まれる食品も数多くあります。
つまり、水を聞きなじみのない言葉に置き換えて、否定的に聞こえるようにした、ただのジョークだったのです。

ジョークではあるDHMOですが、この言葉が発生してしばらくのうちは騙される人が多くいました。DHMOを規制しようとする動きがあったほどです(結局ジョークがばれて中止されましたが)。
しかし、DHMOが水であると見抜いた人もいました。
科学の知識があれば、情報に振り回されることなく見破れるのです。
逆に知識を持たない人は、「危険だ」というイメージが先にきて、誤った判断をしてしまうこともあります。

これも科学の知識が大事な理由の一つです。
「なんだかよくわからないもの」が「ある特定の物質」であるとわかります
他の例においても、危険だという先入観だけで判断するのではなく、冷静な判断を下せるようになるのです。
これって、確実にいいことだと思いませんか?

おわりに

ここまで科学の知識は大事だというお話をしてきました。

私自身が化学科の人間なので、科学の中でも化学の話だけになってしまいましたが、科学のうち他分野でも大事な知識は数多くあります。
新しい電池と古い電池を同時にセットしてはいけませんし(破裂する恐れがあります)、ALDH2(遺伝子のうちの一つ)が完全に欠けている人はお酒を飲んではいけません(エタノールが酸化されてできるアセトアルデヒドを分解できないため大変なことになります)。

いかがでしたでしょうか。
これを機会に科学に興味を持っていただければ嬉しいです。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

著者
キャベンディッシュ
出身:広島県立安古市高等学校
学歴:大学在学中(山口大学理学部化学科2年)
趣味:読書、ゲーム

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